第01準備書面(因果関係の判断枠組み)
「判断枠組み」とは、裁判所が判決を下す際に場当たり的な審査をしないように設けられている、審査過程の大枠を指します。 この裁判では、原告の甲状腺がんが原発事故の影響で発症したかどうかの因果関係が最大の焦点ですが、私たちは、これまで多くの公害裁判で積み上げられてきた「疫学」という科学的手法を使うことで、因果関係を導きうるとする「判断枠組み」を示しています。第1準備書面は、それをわかりやすく解説したものです。(起案担当:中野弁護士)
第02準備書面(東電答弁書への反論)
第2準備書面は、東電の答弁書への反論です。東京電力は、UNSCEAR報告書に基づいて原告の被ばく量は10ミリシーベルト以下であり、100ミリシーベルト以下ではがんを発症しないと主張しています。これらに対し、反論したものです。(起案担当:井戸弁護士)
プレゼン動画(第02準備書面)
第03準備書面
(東電第1準備書面への反論)
第3準備書面も、東電の第1準備書面に対する反論です。被告が主張の根拠としている「UNSCEAR報告書」では、日本人は、コンブなどを食べているため、甲状腺被ばく線量が他国の2分の1であるとしていますが、こうした主張に反論しています。また、事故後、1080人の子どもを対象に行った甲状腺モニタリングの結果についても詳細に反論しています。(起案担当:井戸弁護士)
プレゼン動画(第03準備書面)
第04準備書面
(因果関係の判断枠組み)
第4準備書面は、第1準備書面で主張した「判断枠組み」について、さらに内容を深めたものです。放射線被ばくには閾値がなく、また事故直後の被ばく線量がわかっていないことを踏まえ、裁判の被ばくと疾病の因果関係をどのように判断するのが妥当であるか、過去の原爆症認定訴訟などの裁判例に照らして説明したものです。(起案担当:中野弁護士)
プレゼン動画(第04準備書面)
第05準備書面(原因確率)
疾病(ここでは甲状腺がん)がある原因(ここでは放射線)によって生じたと考えられる確率を「原因確率」といいますが、第5準備書面は、津田敏秀岡山大学大学院環境学研究科教授の意見書をもとに、その概念を解説し、この裁判でも、「原因確率」を判断の材料とすべきであると主張したものです。疾病の原因を突き止めるために発展してきた「疫学」の歴史を解説した上で、過去の公害裁判で、疫学を用いて因果関係が判断されてきたことを解説しています。(起案担当:西念弁護士)
第06準備書面
(原告それぞれの原因確率)
第6準備書面は、第5準備書面で主張した考え方を、この裁判の原告に当てはめて、原告ごとに「原因確率」を算出したものです。津田敏秀岡山大学大学院環境学研究科教授の意見書をもとに、居住地域ごとに原告の「原因確率」を算出した結果、放射線に起因してがんとなった確率が最も低い原告でも94%、最も高い原告は99%であると主張しています。(起案担当:田辺弁護士)
プレゼン動画(第05、06準備書面)
津田敏秀岡山大学教授のメッセージ
現代科学・現代医学では、因果関係は確率で表記されます。原発事故に遭遇し曝露された原告たちの甲状腺がんが、その高い原因確率に照らして、被ばくに起因することは明らかです。これまでに350人以上の甲状腺がんが、発見されたということですが、実際には、もっと多くの患者が潜在することが懸念されます。癌の症状が進行する前に早期発見し、治療することが大切だと考えられ、そのためには原発事故当時に福島県民だった方々に現状知っていただく必要があります。原発事故による甲状腺がんの増加は、子供青年だけでなく大人でも増加します。いわゆる過剰診断説は反証され、この数十倍の甲状腺がんの説明はできません。
注記:なお、『福島原因確率の計算方法とその結果』と名付けた意見書の末尾の巻末資料3には、「原因確率」と名付けている確率の呼び名の整理をしておりますのでご参照してください。この確率は、原子力労働者の発がん問題など、世界各国や国際機関、日本政府でも用いられてきた確率です。本意見書は、医学関係教科書や論文に基づいて書いております。ご参考になれば幸いです。